特集レポート
首都高メンテナンスミッション
~重さ6トンの巨大門型標識柱を10分で設置せよ!~(前編)
首都高のルート案内のメインともなる緑色の案内標識(看板)。これらはどのように設置されているかご存知だろうか?通行止めにして設置する? そんなことをしては大渋滞が起こってしまう。ではどうやるか?そこには多くの壁を乗り越えた男たちのドラマがあった。
作業は分刻みのスケジュールで行われる
日頃、目にする機会の多いJCTや出口の案内が表示された緑色の案内看板。これらがどのように設置されているかはあまり知られていない。今回は、その案内看板設置工事に立ち会ってきたのだが、その状況たるや想像を絶する厳しさがあった。
分刻みのスケジュールで、1つのミスも許されないプレッシャーの中で行われる作業は、まさに職人のなせる業。そこで今回は、首都高メンテナンスミッションの前編として、その工事の必要性や問題点、解決方法、工事の工程などを追ってみることにしよう。
今回の工事の目的は、「この先に浜崎橋JCTがありますよ」という案内看板とベースとなる門型標識柱を設置すること。言葉にすれば簡単に思えるが、この看板を設置するための工事には、多くの課題が山積していたのである。
通行止めは不可、しかしクルマがいない状況作りは必須
この工事が行われるポイントは、都心環状線の芝公園付近。

ここの内回りと外回りの計4車線をまたぐようにして、案内看板(門型標識柱)を設置する。内容を簡単に説明すると、4車線の両端にそれぞれ支柱を建て、そこに重さ6トンもの巨大な梁をクレーン車で持ち上げ、車線を横断させて支柱と組み合わせる。
路線上で梁を動かす場合、安全管理上、クルマが梁の下を通行するような状況では工事は行えない。なにかあったら、即、大惨事に繋がるからだ。ということは、4車線のすべてにクルマがいない状況にする必要がある。
しかし、首都高は今や首都圏の大動脈。ましてや都心環状線ともなれば、1日の通行量は約45万台。ここを通行止めにしては大渋滞が起こり、マヒ状態となるのは必至。工事現場周辺にはクルマがいない状況を作らなくてはいけない。かといって、全面通行止めもできない。そんな悩ましい状態をどう切り抜けたのか。
空白の時間を意図的に作り出す
この問題の解決には、「先頭固定」という方法がとられた。これは工事現場に通じるすべての路線で低速走行車を走らせ(片側2車線の場合は、2台が並列に並ぶフォーメーション)、意図的に交通の流れを堰き止め、空白時間を作るという方法。
具体的には、追い出し車と低速走行車の二手に分かれ、追い出し車が前にいる一般車両を追い出し、後ろを走る低速走行車がゆっくり走ることで、その間にクルマが1台も走っていない空白時間を生み出す。
これは上り下りだけの放射状に伸びる路線であれば先頭固定は2カ所で済むので、さほど難しいことではない。しかし、現場は都心環状線。先頭固定が必要な所はなんと7カ所にも及ぶ。また、渋滞していては追い出すことができないので、時間は渋滞の起きにくい土日の深夜に限られる。
先頭固定は分刻みのスケジュールで行われるが、たった一ヶ所でも足並みが乱れると、工事現場にクルマがなだれ込み、すべてが水の泡となる。一糸乱れぬ行動が必要な先頭固定は、多くのプロフェッショナルが阿吽の呼吸で作り出す奇蹟の空白時間ともいえるのだ。
しかし、抜群のチームワークで作り出した先頭固定による空白時間は、それでも約10分間。その限られた時間の中で、巨大な梁をクレーンで持ち上げ、支柱に固定するという作業を行わなければならない。
さらに、先頭固定に先立って、機材の設置や、梁を組み立てる地組み作業などの事前準備のために、内回り・外回りのそれぞれ1車線ずつ車線規制をしている。通行止めではないものの、首都高の流れを妨げることに変わりはないから、長い時間はとれない。できるだけ短時間に効率よく進められるような事前準備が必要だった。解決するべき課題は、まだ残されていた。
地組みの時間短縮を可能にしたものとは?
梁は4車線をまたいで設置されることからも分かるとおり、非常に長い。その長さのまま搬入することは出来ないため、3つのパーツに分割される。現場ではこれを1つに繋ぎ合わせる地組み作業が必要になる。この作業、通常は架台という梁を置く台をガッチリ組んで、その上で繋ぐのだが、その分、工事の時間が長くなる。通常どおりの準備をしていてはとても間に合わない。
「時間を短縮するために何か良い手はないものか?」と悩むなか、工事を請け負うJFEエンジニアリング(株)が突破口を開いた。
まずは空中ジョイント。これは分割された梁のパーツを2台のクレーンで吊った状態でジョイントする珍しい手法。この方法ならば架台の組立て及び撤去の時間を大幅に節約できる。しかし、風の影響を受けやすく、クレーンの操作にも高度なテクニックを要する。
もう一つは、案内看板を梁に取り付けた状態で搬入すること。通常の工事では、何も付いていない梁だけの状態で門柱に固定し、その後看板を取り付ける。案内看板があらかじめ梁に付けてあれば、現場での工程が一度で済み、これまた大幅に時間を短縮できる。だが反面、搬入や梁の設置途中でキズなどがつく可能性もともなう。多くの業者は責任問題に発展することを嫌い、引き受けたがらないやり方だ。
JFEエンジニアリング(株)はそうしたリスクを踏まえながらも、時間短縮を実現するべく、上記のような非常にチャレンジングなプランを提案した。そしてこの提案があったからこそ、車線規制や先頭固定による影響を最小限に留めることができた。
「ただそれだけのこと」に尽力する首都高
ここで冒頭に話した工事の目的に立ち戻ってみよう。この工事の目的は、「この先に浜崎橋JCTがありますよ」という案内標識を設置すること。ちょっと聞いただけでは「ただそれだけのこと」といわれてしまうかもしれない。しかし「ただそれだけのこと」に、これだけの知恵と労力、そして技術を集結させるのは、首都高を迷うことなくスムーズに走ってほしい、そしてそのための弊害は最小限に留めたいという首都高の姿勢の表れなのかもしれない。
さて、果たして空中ジョイントや先頭固定はうまくいったのか? 無事に案内看板は設置できたのか? 緊迫の現場を実際に取材したリアルドキュメントは、近日公開予定。
首都高メンテナンスミッション
~重さ6トンの巨大門型標識柱を10分で設置せよ!~(後編)
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