特集レポート
「山手トンネル」(5号池袋線~4号新宿線)12月開通!
~エコロジーハイウェイへの取り組み~
今年12月に山手トンネル(5号池袋線~4号新宿線)が開通することは以前の特集でお伝えしたとおり。今回は環境面にスポットを当て、技術の粋を集めて作られた「山手トンネル」ではどのような取り組みをしているのかを見てみたい。
地下構造を採用したのは環境への配慮から
地球温暖化による気温の上昇など、今や世界的な問題にもなっている環境問題。エコロジーという言葉を多く耳にするようになった昨今、我々の環境に対する意識も高まりつつある。首都高とて例外ではない。むしろそれ以上に意識している。なにせ山手トンネル建設のキーワードは「環境改善」だったのだから。
環境問題で重要な案件は、やはり排気ガスなどによるCO2やNO2(二酸化窒素)の増加。さらに首都高の場合は、騒音や日照などさまざまなケアするべき課題を抱えていたのである。それらのハードルをクリアし開通させるためには、どのような手法が用いられたのだろうか。
その答えは地下構造(トンネル)にある。中央環状新宿線(山手トンネル)を造るには、どのような方法が簡単か。それは首都高の定番とも言える高架構造だろう。山手通りに沿って造るので不可能ではない。まして地下構造に比べればコストだって安く済む。しかしそうしなかったことに「環境改善」をキーワードにした理由がうかがえる。
もし高架構造にしていたらどうなっていたか。ただでさえ交通量の多い山手通り。さらに通過するクルマが増えれば排気ガスも増加する。騒音も問題になるだろう。速度域の高いクルマが増えれば騒音も大きくなるのだから。そして高架構造ともなれば、日照の問題も出てくるはず。これらの問題をクリアするために取られた手法が地下構造というわけだ。
換気塔周辺の騒音レベルは静かな公園と同じ
では地下構造にすることで、なぜこれらの問題がクリアできるのか。まず排気ガスなどによるCO2やNO2の問題。高架構造では排気ガスを大気中にそのまま排出することになる。しかし地下構造にすれば、排気ガスを換気塔に集めることが可能。そこで集めた排気ガスをクリーンにしてから大気に排出すればクリアできる。
当然、クリーンにするためには何らかの設備が必要だが、換気塔には最新技術の「低濃度脱硝装置」や「SPM(浮遊粒子状物質)除去装置」を設置した。低濃度脱硝装置とはNO2を90%以上除去するもので、SPM除去装置とはミクロン単位の細かいチリであるSPMを80%以上除去するもの。
集められた排気ガスはこれらの装置を通過し、ろ過されて換気塔から地上100メートルの高さまで吹き上げられて拡散する。こうすることで、排気ガスを環境基準の数百分の一以下にまで下げているのである。
もう一つの騒音問題。これは地下構造にすることでほとんどのエリアで解消されている。問題は、換気塔や出入口、ジャンクションなど地上に出ているところとなるが、換気塔には消音装置が配備され、換気塔の周辺は静かな公園と同じくらいの静けさだという。また、出入口やジャンクションなど地上に出る部分は、遮音壁や裏面吸音板(高架部分の下に当たる位置に設置)、低騒音舗装などを施している。これらを設置することで、騒音レベルは2~3デシベル低減。2~3デシベルと聞くと大したことがないように思えるが、実は交通量が半分になったのと同じ程度というから驚きだ。
日照問題に関しては、地下構造ということでおおむね解決。換気塔に関しても、省スペース化やデザイン性を追及するなどさまざまな工夫が施され、周辺の美観を損なわない造りとなっている。
上を走る山手通りも大幅に生まれ変わる
周辺環境への配慮という点では、山手トンネルの上を走る山手通りの整備も見逃せない。ご存知の方もいるかもしれないが、現在山手通りは多くのポイントで整備を行っている。これは、東京都の事業を首都高が山手トンネルと一体的に手がけているのだが、完成後は今までの山手通りとは全く別の道路になるといっても過言ではない。「走る人だけでなく歩く人にも優しい」をコンセプトに、大幅な改良が行われているのだ。
具体的にどう変わるかというと、まず歩道がバリアフリー化され、年配者や子供、車椅子の人でも安心して通行できるようになる。また歩道には自転車通行帯を設け、歩行者の安全面も確保。今問題となっている自転車と歩行者の接触事故なども大幅に減少するだろう。さらに電線などのライフラインが地中化されて景観がスッキリするほか、歩道と中央分離帯には植樹が施され、緑豊かな道路に生まれ変わることになる。
一方、車道の方も大幅な改善が予定されている。渋滞の原因にもなっていた道路上に停車しての積み下ろしなどを考慮して、停車帯を設けるほか、主要な交差点では右折レーンや左折レーンなどを設ける。交通の流れをよりスムーズにすることを目的とした整備が進められている。また、路面には前述の低騒音舗装が施されるほか、工事は低騒音・低振動機械を使用するなど、周辺住民への配慮も徹底している。
植樹の種類は住民の意見を取り入れて決定
このような工事は周辺住民の理解があってこそだが、そのためにあまり前例がないということも行っている。例えば植樹。これは誰がどのように植える木を決めているのだろうか。通常は造り手が決めていることが多かったという。ところが、山手通りの整備では候補を何パターンか住民の代表者などに掲示し、意見を取り入れて決めているのだとか。
同様に、歩道の歩行者と自転車通行帯を分けるブロックの色なども候補を何パターンか提示し、エリアごとに意見をヒアリングしているそうだ。エリアごとに聞いているということは、完成した時には場所によって木の種類が違っていたり、歩道の色が違っていたりすることもあるはず。
ちなみに山手通りの整備がすべて終わるのは、方南通りから北側は平成21~22年度、南側は平成22~23年度の予定。まずは山手トンネルの開通が第一なのでまだ先の話だが、完成後は植樹や歩道などエリアごと違いを探しながら散策してみるのも楽しくなるのかも。
まとめ
さて、今回は環境をテーマにまとめてきたが、最後に山手トンネル(5号池袋線~4号新宿線)が開通することでどのくらい環境が改善されるかを記しておこう。CO2は年間6万トン削減。これは山手線の内側を90%森にするのと同じ効果がある。NOxは年間70トン削減。これはガソリン自動車が電気自動車3万台に置き換わったのと同じ。SPMは年間4トン削減。これは500ミリリットルのペットボトル4万本に相当する。
この数値を見ればそのすごさが良く分かるのだが、我々首都高ユーザーの一人一人がスマートドライブを心掛ければ、この数値はもっともっと上げられるのかもしれない。
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