特集レポート

【エリア特集】2007-10-25

首都高メンテナンスミッション
~重さ6トンの巨大門型標識柱を10分で設置せよ!~(後編)

 今回は、門型標識柱設置工事のハイライトとも言える先頭固定や梁の連結など、実際の工事現場に密着し、見て聞いて感じたことを徹底リポート。先頭固定後に緊張のハプニングが起こるなか、果たして工事は無事に成功したのか!?

一つのミスがすべてを水の泡に帰す

 リポートに入る前に、まずは工事の内容と流れを簡単に説明しよう。この工事は都心環状線の芝公園付近に、ジャンクションの案内標識を設置するというもの。その標識を取り付ける梁が重さ6トンもある巨大な物で、4車線を横断するように設置される。そのために事前に支えとなる支柱を建てておき、そこにクレーンを使って標識が付けられた梁を連結する。

 実際の作業段取りは大きく以下のとおり。
・4車線のうち、内回りと外回りの追越車線(中央分離帯寄り)を車線規制
・クレーン車や梁などの資材を搬入
・梁を空中ジョイントし、接合部を塗装
・先頭固定、梁設置、ボルト締め
・後片付け、車両撤収

 特に気を遣うのは「空中ジョイント」と「先頭固定」。 「空中ジョイント」とは、分割された梁同士をクレーンを使って空中で接合すること。これは24メートルを超える長い梁をクルマに乗せて搬入するのは不可能なため、3分割して搬入した梁を1つにするために行われる。

 こうした組み立てをする場合、一般的には梁を置く架台と呼ばれる台を組み、そこで安定させて連結するが、これをクレーンで吊り上げ、空中で行うので「空中ジョイント」という。この方法はリスクが高い上に、高度なテクニックを要するが、工事による車線規制を少しでも短くするために採用している。

 「先頭固定」は、一定時間現場周辺に一般車両が通行しない空白時間を作るために行われる。梁を支柱に組み付ける作業は、4車線すべてを横断する。安全確保の観点から梁の下をクルマが通行している状態では行えない。しかし通行止めにすれば交通マヒが起こる。そんな八方塞がりのような状況下で生まれた策なのだ。

 先頭固定では、追い出し車と低速走行車が1組になって出動する。まず、先行する追い出し車が露払い役として前方を走るクルマを追い出す。そして、後方の低速走行車がゆっくり走ることで、追い出し車との間にクルマが一台もいない空白時間を作りだす。

 この先頭固定には警視庁の高速隊パトカーが出動するなど様々な組織の協力を得て実現できていることなので、失敗は許されない。さらには先頭固定が必要なポイントは7カ所にも及ぶため、一糸乱れぬ行動が必須。それでも先頭固定で作り出せる空白時間は約10分が精一杯。その間にクレーンで梁を持ち上げ、支柱に組み合わせ、ボルトで固定する作業をやりきる。

先頭固定が間近に迫ったところで小雨が…

 現場周辺は意外にも薄暗い。深夜なので当然なのだが、蛍光灯のような灯りを煌々とたいて作業するイメージとは大きく異なり、夕日が沈んだ直後くらいの明るさ。そのすぐ横を高速で走るクルマが通り抜けていく。そんな中、職人たちは黙々と任務をこなしていた。

 9月29日21時の車線規制から工事は始まった。当初の計画では車線規制開始から準備工の作業が23時20分まで掛かり、さらに空中ジョイントの完了を深夜1時10分と見込んでいた。しかし熟練の職人たちが効率よく作業を進めた結果、0時過ぎには空中ジョイントまで完了し、接合部のサビを防ぐための塗装に入っていた。予定よりも1時間ほど短縮された計算になる。

 梁設置に向けての準備も終わり、最終打ち合わせをしている頃、ポツリポツリと小雨が降りだしてきた。工事に影響が出るかと思いきや、職人たちは至って冷静だった。ちなみに門型標識柱の工事で一番怖いのは「風」だという。1つの梁を2台のクレーンで持ち上げ、回転させながら支柱に組み付ける。お互いの呼吸を合わせながら梁を移動させるだけでも難しいのだが、そこに風が吹き込むこと、空中の吊り荷が暴れてしまうのだ。

 そんな話をしていると、本日のメインイベントの時刻が間近に迫っていた。深夜2時40分、7カ所の入り口から先頭固定を開始するとの無線連絡が入った。

ありえない出来事に騒然とする現場

 先頭固定開始。いよいよ工事最大のヤマ場を迎え、職人たちの表情もさらに引き締まる。追い出し車が現場を次々と通過し、最後の追い出し車が通過して安全確認を取る。この瞬間から4車線にクルマがいない空白の時間が始まった。残り時間が1分ごとにカウントダウンされる。


 巨大な梁が静かに吊り上げられた。職人が梁の端に取り付けられた介錯綱を引っ張って支柱へと導く。梁は空中でゆっくりと回転していく。支柱にガチっとはまり、ボルトを止める作業に入る。その時、鋭い声が響いた。「オイ! クルマが来てるぞ!」

 7カ所すべての追い出し車が通過したのだから、この現場にいるはずはないのだが、振り返るとパトカーと一緒に現場にやってくる一般車両の姿。キョトンとしているドライバーの表情すら見て取れる。おそらく先頭固定が始まるタイミングのわずかな隙間に紛れ込んでしまったのだろう。その状況に現場は一時騒然となった。まだ支柱と梁はガッチリ固定されていない。クレーンで吊り上げられているので大丈夫だとは思いつつも、ピリピリとした緊張感が辺りを覆った。

現場の一同が息を飲んで見守る中、2台のクルマは梁の下を無事に通過した。ほっと胸を撫で下ろすのも束の間、梁と支柱を固定するボルト留めが急ピッチで進められた。ただでさえ時間のないなか、ハプニングで作業を中断させられたことも挽回することになったからだ。

残り時間わずか。作業は完了できるのか。


 門型標識柱は、強度を確保するために、片側だけで約80本のボルト締めを行う。ただし、1本1本の作業に手間がかかる。部材の接合箇所には大きい穴(ハンドホールと言うらしい)と小さい穴(ボルトが入る穴)が開いていて、大きい穴から腕を入れ、中から小さい穴にボルトを通し、外からナットで締める。これを小雨の降る(※)狭い場所で、正確かつスピーディーにこなさなければならない。先頭固定による空白時間が刻々と減っていくことをカウントダウンが告げている。
(※ 雨天時のボルト締め付けのため、後日、ボルト入れ替え作業を行なったそうです)

 いよいよ残り時間がわずかとなり、来るべき車両の流入に備えて、現場の全員に車線規制をしたエリアに入るよう指示が飛ぶ。その中で熟練の職人たちは、着々と作業を進めていく。そしてそれを見守る関係者たち。無事に終わるのかと焦れ始めた2時50分、ついにボルト締めが完了。すると同時に、絶妙のアシストをしていた低速走行車たちが現場を通過した。

 次々と一般車両が流れ込んできて、首都高は瞬く間に以前の姿を取り戻していた。この一大ミッションを見事成功させた関係者たちからは安堵の笑みがこぼれる。だがそれも一瞬。すぐに残りの作業に取り掛かっていくのだった。

まとめ

 長さ約24メートル。重量約6トン。この門型標識柱をたった10分で設置させる。誰もが不可能と思ったミッションはこうして完遂したのである。分刻みのタイムスケジュールで、一つのミスが命取り。こんな状況でミッションを成功させるためには、この工事に関わるすべての人間が自分の役割を認識し、それを実行できるスキルを備え、まわりと呼吸を合わせなければ成し遂げられない。今回そんな男たちの姿を間近で見てきたわけだが、その背中にプロとしての誇りを垣間見たような気がした。



先頭固定CGムービー

首都高メンテナンスミッション ~重さ6トンの巨大門型標識柱を10分で設置せよ!~(前編)

門型標識柱工事に伴う一事通行止めおよび入口閉鎖のお知らせ

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