特集レポート

【首都高で働くクルマ】2007-11-29

首都高で働くクルマ(3)
~高所で大活躍するクルマ編~

 首都高で働くクルマの3回目となる今回は、人の手が届かないような高い所で活躍するクルマに注目。高所作業車や水噴霧設備点検車、オーバーハング車がどんな仕事をしているのかを見てみよう。

■高所作業車(ミニバケット)
乗用車より少し大きいサイズで地上12.5メートルへ

 高所で作業を行うクルマの中でも、その中核を担っているのが高所作業車。用途や目的に合わせて、最大地上高の異なる2モデルを配備している。まずはその2モデルのうち作業高が低い弟的存在のミニバケットを見てみよう。

 ミニバケットは、主に照明の点検整備などで使用されることが多いクルマで、ミニと言っても最大の地上高は12.5メートルにもなり、バケットには2人(200キログラムまで)の作業員が搭乗できる。ブームの伸縮スピードは伸ばす時は30秒で6.04メートル、縮める時は25秒で6.04メートルとかなりスピーディ。照明などは点検箇所が多いこともあり、作業時間の短縮にも一役買っている。

 このクルマの特徴としてもう一つ挙げられるのが、狭い場所でも作業が行えること。一般的にこの種のクルマには、アウトリガーと呼ばれる車体を安定させるためのジャッキが存在する。ボディの横方向に伸びて、地面をガッチリとおさえるものなのだが、ミニバケットはさほど横方向に伸ばさずとも作業が行える。おかげで次に紹介する兄的存在のスーパーデッキでは入れないような道幅や作業スペースが狭いところでも問題なく作業することができる。

 ちなみにこの種類の車両は、バケットが30メートル以上伸びるタイプもある。しかし高く上がるほど風などに対する安定を確保するため、アウトリガーを大きく張り出し、場所をとってしまう。首都高でなるべく省スペースで運用できるように選ばれたのがこのタイプのミニバケットだった。

 ボディは3トンクラスのシャシーに架装されるので、車両重量は6トン近いものの、長さは5.55メートル、幅は1.88メートルと大型の乗用車より少し大きい程度のサイズとなっている。このミニデッキはさまざまな点検や補修などに使用されているので、他の働くクルマに比べて発見できる確率も高いので、工事中で車線規制がなされている時などに注意深く見てみよう。

■高所作業車(スーパーデッキ)
たった2分足らずで地上約20メートルの高さへ

 ミニバケットの兄貴分にあたるのがスーパーデッキ。こちらは主に高架橋の裏側の点検や補修、標識の取り付けなどで活躍している。最大地上高はなんと、19.7メートルにもなる。

 伸縮速度は伸縮ともに55秒で10.99メートル。ミニバケットに比べれば速度は劣るが、それでも2分足らずで最大地上高に達することを考えれば十分に速い。積載荷重はミニバケットの5倍となる1,000キログラム。写真を見てもらえば分かるとおり、ミニバケットに比べ、プラットフォームのスペースも格段に広い。また、プラットフォームを垂直、水平に動かすことも可能で、対象物へのアプローチが容易に行えるのも大きな特徴。

 ボディサイズは長さが7.38メートル、幅が2.17メートル、車両重量は7.77トンと、ミニバケットに比べればその違いは歴然。狭い場所での作業は得意とは言えないが、広範囲の補修作業にこのスーパーデッキがあれば十分に対応できるというわけだ。ちなみにスーパーデッキも他の働くクルマに比べれば出動する機会が多め。やはり工事中などに見かけられる可能性が高い。

 さて、ここでミニバケットとスーパーハイデッキのトリビアを一つ。高所作業車と呼ばれるこの両者。実は省エネも考えられている。搭載されるエンジンは省エネ対応型で、しかもエンジンを停止すると、キャビン内の不必要な電源もオフになるという、エコロジーにも配慮しているクルマなのだ。

■水噴霧設備点検車
1台なんと5億円の超高級車?

 名前を聞いても何をするクルマなのかサッパリ分からないかもしれないが、これは前回の特集(山手トンネル開通)でもお伝えした水噴霧設備が正常に機能するかをチェックするためのクルマ。

 水噴霧設備は主にトンネルに設置されているが(首都高では11のトンネル)、いざという時に作動しなければ意味がない。そこで定期的に点検をするのだが、今までは通行止めにして、実際に水を噴霧させてチェックを行っていた。

 しかし、この方法では通行止めによりユーザーにも多大な迷惑がかかるだけでなく、経済的な損失も大きい。そこで開発されたのがこの水噴霧設備点検車両だ。実はこのクルマ、首都高が特別に発注したクルマで、世界に2台しかない(2台とも首都高が所有)。しかも1台の価格は開発費も含めれば、なんと約5億円というから驚きだ。ただ、数年の通行止めにかかる、規制費や広報費用などのランニングコストを考えると、コスト削減にもつながるという。

 さて、この水噴霧設備点検車はどんな仕組みでチェックするのかというと、水噴霧のヘッドにクルマに設置された集水器具をあてがい、その中に水を噴霧。その量を見て正常に作動しているかをチェックしている。集水器具は、1台に5セット搭載されており、しかも前後左右上下に動いたり旋廻も可能なので、さまざまな位置の水噴霧ヘッドに対応している。

 このクルマの導入により、通行止めにすることなく1車線規制するだけで点検を行うことが可能となったことは、私たちユーザーにとっても大きなメリットと言える。通常は2台が同時に動くことが多く、現在はトンネルも多いことからいつも出動しているような状態。しかし残念ながら冬季は出動しない可能性もあるので、春を待って見つけたい。その時は、奇抜なスタイルにかなり驚くはずだ。

■オーバーハング車
足場がなくても作業できるニクイやつ

 最後に登場するのは、これまた名前だけでは分かりづらいオーバーハング車。これは壁の外側など足場が組みづらい場所で作業が必要な時に活躍する。高架などで特にその効果を発揮するが、仕組みはこうだ。まずクルマ本体は、壁の内側にある。その内側からブームで作業デッキを壁より高い位置に上げ、壁の外側に出し、そこから吊り下げるようなカタチでデッキを移動させ作業を行う。これで足場を組むことなく、効率良く作業することができる。

 ポイントは高い壁でも乗り越えることができ、しかもそこからクルマ本体より低い位置に下げて作業を行うことも可能な点。また、デッキ自体もひと工夫されており、通常は2.57メートルの長さが、必要に応じて4.5メートルまで伸縮。これにより作業範囲も広くとることができ、作業効率は大幅にアップする。さらに、運転席とデッキ部分にはインターホンが設置されており、両者が見えない状況での安全面を確保するほか、作業の手を休めることなく移動することが可能となっているのも大きなポイントと言える。

 ちなみにこのオーバーハング車、首都高では主に遮音壁の設置や取り替え、壁のメンテナンスなどに使われている。見かける頻度は今回登場した他のクルマに比べると少なく、さらにデッキが壁の外に出ているため、見かけたとしてもクルマの全体を見るのは難しい。

■まとめ

 首都高で高所作業というと、あまりピンと来ないかもしれない。しかしながら、首都高の約8割が高架であり、水噴霧設備を整えたトンネルが10箇所以上もあることから、実は高所で活躍するクルマも多い。中でも水噴霧設備点検車の価格には驚いた。それでも従来の方法による不便さや経済損失を考えれば、納得というもの。一方、高所作業車やオーバーハング車は、首都高上だけでなく、高架の下や路線の外側などで見かけることも出来るかもしれない。

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