特集レポート
首都高で働くクルマ(4)
~冬の路面で活躍するクルマ~
働くクルマシリーズ4回目となる今回は、降雪時などに活躍する冬季にしか見られないクルマを紹介。首都高には降雪の状況などに応じてさまざまなタイプのクルマが配備されていた。
高速での降雪は重大事故につながる
近年、関東地方に降る雪の量は減少傾向にあるとはいえ、まだまだ雪の脅威は依然として残っている。路面に雪が積もればスリップする可能性が高くなり、スピンや事故の原因にもなる。ましてスピード域の高い高速道路であれば、重大な事故にもつながりかねない。
そんな状況下において、少しでも路面状況を改善するために働いているのが、今回紹介するクルマたちだ。これらのクルマは東東京、西東京、そして神奈川など、各管理局に数台ずつ配備されており、降雪が予想される冬季を中心に活躍している。基本的にはすべて雪を融かす、あるいは除雪することが目的だが、それぞれ特徴が異なるので、その点を中心に見てみよう。
■塩水散布車
飽和状態の塩水で雪を融かす
塩水散布車とは、その名のとおり塩水を路面に散布するクルマのこと。塩水には雪などを融かす効果があることから、雪の降り始めや少量の降雪時などに出動する。見た目は夏場に路面の保護などで使われる散水車とほぼ同じ。水を積んでいるのだから当たり前とも言えるが、塩水ということで少々異なる点もある。
海の近くにあるクルマが潮風でサビやすいのと同様に、散水車をそのまま使用すると、タンクの内部などがすぐにサビてしまう。そのままだと1年ももたないそうだ。そのため、塩水散布車はタンクの中にサビが付かないようコーティングが施されている。また、ポンプやバルブなどにも特殊合金やプラスチックが使われているなど、実は細かいところで特別な仕様変更が行われているのだ。
塩水は、これ以上塩を溶かすことができないという飽和状態で積載され、路面に散水される。しかし、塩水に雪が混じった段階で飽和状態ではなくなり、その後の効果が薄れてしまうのが弱点となる。さらにもう一つの問題は場所。塩水散布車は、塩と水を混ぜた状態で積載するため、事前に塩水をつくる工場が必要になってくる。10トン車に積載することもあるので、途方もない量を確保するための製造場所という点もネックになってくるわけだ。
この問題をクリアしているのが、次に紹介する湿塩散布車となる。
■湿塩散布車
塩と水をそれぞれ別に散布する
塩水の効果で雪を融かすという方法は変わらないものの、塩水の製造工場を必要としないのが、この湿塩散布車だ。塩水散布車が塩水を積載するのに対し、湿塩散布車は、塩と水をそれぞれ別に積載している。よって事前に塩水をつくっておくための工場が不要となり、実用性に優れたクルマとも言える。
また、塩水散布車の弱点でもあった、雪と混じることによる効果の薄れに関しても、この湿塩散布車は克服している。その仕組みは、「塩と塩水」を積載し、塩水散布後、さらに塩を散布するというもの。これにより、塩水が雪に混じって塩分濃度が薄まっても、さらに塩があれば常に飽和状態を保つことができる。塩水散布車でこの方法を行うには、近くに塩水の製造工場があるなど塩水にゆとりがある時にしかできないが、湿塩散布車ではそうした条件に左右されず、高い効果を常に持続することができるというわけだ。
さてこの湿塩散布車、いったいどのように塩や水を散布するのかというと、車両最後尾の円盤のようなものを回転させ、そこに塩と水を噴射し、回転の力で円盤から路面に散布するという方法を採っている。
塩や水の噴射量のほか、円盤の回転速度などもコンピュータ制御しており、湿塩散布車自体のスピードともリンクすることで、路面に均一に散布することが可能となっている。
■塩化カルシウム散布車
融雪効果の高いアニキ的存在
塩水散布車、湿塩散布車と、これまでは塩水を使って融雪するクルマだったが、この塩化カルシウム散布車は、車名のとおり、塩化カルシウムで融雪するクルマとなっている。塩化カルシウムは水に溶けやすく水の凍結温度を大幅に下げる性質があるため、融雪剤にはもってこい。塩水よりも融雪効果が高いため、このクルマは本格的な積雪が予想される時などに出動している。
ちなみに塩化カルシウムは、大きさ順にフレーク状のもの、粒状のもの、粉状のものの大きく3タイプに分けられるのだが、首都高ではどのサイズのものが散布されているかお分かりだろうか。正解は粒状のもの。フレーク状のものでは効果が出るまでに時間がかかり、粉状のものでは風で飛んでしまう恐れがあるためだ。
絶大なる効果を誇る塩化カルシウムだが、実は弱点もある。それは散布し過ぎるとヌルヌルになってしまうこと。こうなってしまっては走行するクルマがスリップしかねないので本末転倒。それを防いでいるのが、湿塩散布車に出てきたコンピュータ制御の円盤だ。これにより適正な量を適正な範囲に散布することで、高い効果を生み出している。実力的には塩水散布車や湿塩散布車のアニキ的存在となるのが、この塩化カルシウム散布車だ。
■ウニモグ(ハイド板装着車)
物理的に雪をどかす首都高の切り札
ウニモグはアタッチメントを交換することで、1台で何役もこなすと「首都高で働くクルマ(1)」の中でお伝えしたが、除雪用のハイド板を装着したウニモグがコレ。今までの3台は雪を融かすという方法だったが、このウニモグは物理的に雪をどかす、つまり除雪する。除雪するということは、前述の3台では追いつかないほどの降雪で路面上に雪が積もっている状態となるわけで、このクルマが出動するのは、かなりの一大事でもある。
除雪の際にキーとなるのは、フロント部分に取り付けられたハイド板。これが雪を押しながらどかすわけだが、素材は鉄。これでガリガリとアスファルトを滑らせては路面はズタズタになってしまう。そうならないために、実はハイド板の下部にはゴムが付けられていて、路面を保護するなど、細かいところで改良が施されている。
写真のウニモグは、車体の下に回転ブラシ、荷台には塩化カルシウム散布機を搭載している。前面のハイド板であらかた除雪し、排除しきれない残雪を回転ブラシで撹拌、同時に塩化カルシウムを散布して融雪を促進する仕様だ。
方法こそ違えど、実力的にはもっとも高いといえるウニモグは、大雪などでなんとしてでも路面を確保しなければならない時に使われるので、なかなか見かけるのは難しい。もし雪でない日に発見することができたら、それはかなりラッキーと言えるだろう。
■まとめ
首都高で頻繁に見かけるパトロールカーと違い、今回登場した4台は、いわば縁の下の力持ちではないだろうか。冬季のしかも特定の条件の下にしか出動しないので、見かける機会はほとんどない。しかし一度雪が降ったとあれば、パトロールカー同様絶大なる効果を発揮する。関東圏の雪道に不慣れなドライバーにとっては非常にありがたいことだ。もし雪の日に首都高を走って路面がキレイであったのなら、それはすでに上記の4台が仕事を終えた後なのかもしれない。
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