特集レポート
高架下に捨てられるゴミ、首都高の対応と課題 ~不法投棄問題を考える~
自分さえ良ければそれでよし。そんな心の貧しい人による不法投棄が止まらない。空き缶やタバコの吸い殻ばかりかと思えば、壊れたラジカセ、掃除機、パソコンのモニターといった家電にいたるまでが捨てられているという。首都高の高架下、この問題に取り組む、首都高の担当者に最近の実態を取材した。
首都高におけるゴミ不法投棄の現状
不法投棄、といえば山深い田舎などを想像しがちだが、そうとは限らない。今回取材したのは「首都高における不法投棄」。担当者によれば、不法に投棄されたゴミを年間に6~10トンは回収しているという。捨てられる場所としては、本線上よりも高架下が圧倒的だそうで、その対応に苦慮している。
もっとも多いゴミは空き缶、ペットボトル、そしてコンビニやスーパーのビニール袋に生活ゴミを詰め込んだもの。大型の家電や、盗難自転車やバイクなどが捨てられていることも珍しくないのだそうだ。
しかも家電が投棄されているときは、たいてい数台まとめて捨ててあるそうで、これは組織や業者の関与を思わせる大胆な犯行。極めて悪質な犯罪だ。リサイクル法の制定によって、これらの廃棄にお金がかかるようになったのも一因だろう。
かかる費用が増えれば管理費を圧迫
これら迷惑な不法投棄を処理するために、まったく余計な労力や費用がかかっている。捨てられていないか巡回し、捨てられていれば対応する。首都高においては、本線上では日常的にパトロールが行われているから、ゴミがあれば適宜回収できる。しかし不法投棄されやすいのは、このパトロール隊の目がなかなか届かぬ高架下…となると、人員も予算も、それ用にまた確保しなければならない。
首都高の保全はユーザーの通行料によってまかなわれている。受益者負担が見えやすい本線上にコストをかけるのは納得感があるものの、高架下の道路の保全にまで通行料をあてるとなるとどうか。そして、構造物のメンテナンスなどに必要となる管理費用を圧迫するおそれさえある。
現在の首都高の対応としては、月1回程度の高架下巡回点検報告を元にいくつかの監視重点地区を設けつつ、地域住民からの通報なども頼りにしながら巡回。必要があるところに業者を派遣して撤去作業にあたっている。
こうして高架下にあるゴミや不法投棄物の撤去にかけたお金は、昨年では約400万円だったという。「あれ? 意外に少ないな」と思った人は正解。問題を完全に解決するためには、これではぜんぜん足りない。
そもそも厳密にいえば高架下は、そのすべてが首都高の管理下ではない場所が多い。たとえば東京都などの自治体が管轄する高架下において、首都高は勝手にあれこれ手を出せないというわけだ。
「管轄はどこか?」が問題を複雑にする
首都高はその大部分が高架上に展開している。下にあるのは一般道であったり、河川であったり。首都高側はそのそれぞれの管理者に「支柱を立てさせてもらって、上空に道路を造らせてもらっている」という構図で、つまり本来的にいって高架下に管理の権限をもっていない。
もっといえば、首都高の下に不法投棄されているゴミだからといって、首都高の一存で取り去ることができない。この「管轄」の別が、首都高としても対策を積極的に取りづらい壁といえる。冒頭で述べた「年間6~10トンの回収」というのも、こういう状況下にある首都高としての、だから…。推して知るべしである。
しかし人の心情的には、首都高の本線上から投げ捨てられたゴミは首都高が処理してもいい気がするし、またそこに首都高の屋根があるからこそ生じる諸問題についても同様である。と、つい思ってしまうが、社会の仕組みはそう簡単ではない。
そうなると該当する道路の管理者である国や都に、責任をもって対応してもらうほかないが、管轄する道路がたくさんあれば、各所のメンテナンスにも相応の時間とお金がかかる。首都高の下ばかり特別扱いするわけにはいかないだろう。
組織や枠組みを超えるコラボレート
もどかしい状況にありながら、だからといって不法投棄を放置しておくわけにはいかない。首都高の道路管理グループは「社会貢献活動」という位置づけで有志をつのり、高架下の清掃活動をはじめている。
この運動は、しだいに組織や枠組みを超えたものになりつつあるようだ。道路を管轄する自治体からも参加をつのり、その地域に暮らす住民も一丸となっていけば、道路からゴミがなくなるばかりか、監視の目も強まって不法投棄自体を確実に減らせるだろう。
ただ、いつまでも彼らのボランティア精神に甘えてしまってはいけない。こうしたゆがみを生み出している現行の枠組みを再編し、官民一体となって取り組んでいく必要があるのだ。
高架下のホームレス問題も深刻だ
また、行政の施策が求められる問題はもうひとつある。首都高の高架下の街路では、ところどころの中央分離帯にホームレスが住んでいる。上空にある首都高によって雨露がしのげ、さらに往来するクルマの人目につくので防犯上の安全があるのだというが、すぐ脇をクルマが走っているのだから、非常に危険な状態だ。
現にクルマからポイ捨てされたタバコの火が、ホームレスのダンボールハウスに燃え移って火事になったという報告や、中央分離帯にあった荷物が不意に車道に転がって、走行中の車両が危険な目に遭ったという事例もある。
とはいえこの問題は不法投棄以上にむずかしく、対応には慎重を期さねばならない。彼らを高架下から追い出したら済むということではないのだ。行政と連携すべきところは連携し、ホームレス自立支援法のもとで解決を探るべき社会問題である。
対策のカギは「人間の心理」を突くこと
これからの展望としては、まずは管轄間の協力体制を密にしていく。その上で、不法投棄に関しては「捨てさせない」工夫を考えていくこと。
というのも、捨てる人には捨てる人なりの心理があるそうで、キレイな場所には捨てる気が起こりにくく、すでにゴミがある場所に捨てたくなるらしい。ゆえに誘因となる「初めのゴミ」を即時に取り除くことが肝要だという。
こうした人間の心理を考えて、実験的にいろいろな標語やポスターも試された。なかでも神社の鳥居を模したマークのステッカーを貼ったところ、そこを汚す人が激減するなど、興味深い結果がたくさん得られた。
「これは実現できるかわかりませんが、たとえば高架下の中央分離帯に色とりどりの花を咲かせるとか。いずれ皆さんが気持ちよいと感じる空間を作れたらいいですね」と首都高担当者。未来の高架下が楽しみだ。
■まとめ
昨今「マナー」と「ルール」の問題はよく持ち上がるが、良識で片づかないなら規制や厳罰化をもって臨むしかない。悲しいことだ。しかし公共場所のタバコの分煙やポイ捨て禁止条例についても、始まってみればそれほどの混乱はなかった。ひとたび習慣づけてしまえば、なんてことのない、じつに簡単なことなのだ。
環境や資源リサイクルがこの先さらに重要になって、それが即、レアメタルの抽出とまではいかなくとも、広く一般に資源の価値観が高まってくれば、ここまで大胆な投棄は自然と減ってくるような気もする…。が、要はそこではなくて、民度レベルの問題である。偽装や詐称もボロが出て、かつての神話は無知と盲信のたまものだったというこの恥ずかしき日本、このへんで膿を出し切って、恥を恥と知って、そろそろマナー先進国の仲間入りをしたい。
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