特集レポート

【エリア特集】2008-02-28

首都高の景観デザイン(2)
~周辺環境との調和~

 ビル群が林立する東京において、その間を縫うようにして走る首都高は、空中を横切る異物、ともとれる。しかしその違和感を少しでも軽減させるため、ある手法が採られていた。カラーリングである。

首都高を色で周辺環境と調和させる

 色というものは意識せずとも私たちになんらかの影響を与えている。その一つとしてよく耳にするのが心理効果。赤は気持ちが前向きになり、緑は癒しを感じ、青は集中力を高めるなどだ。

 色には、近くにある色同士が相殺して、一つ一つの色のどぎつさがよく分からなくなるケースと、ある色が突出して目立つケースがある。

 前出のケースの分かりやすい例を挙げるとすれば、新宿歌舞伎町などの歓楽街。鮮やかな原色系のネオンが立ち並ぶ街の中では、派手なピンクのネオンであっても馴染んでしまう。

 反対に、統一された色合いの中に、まったく違う色が置かれた風景や、自然のなかに人工物が入り込んだ風景をちょっと離れたところから眺めると、少ない面積のものが違和感を醸し出し、悪い意味で目に付く存在になってしまう。

 そして首都高もまた、その構造と立地により、東京という都市のなかで、浮いた存在になる可能性をはらんでいる。約80%が高架で、しかもビルの合間を縫うように走る構造は、頭上や視界に横たわる存在であり、ちょっとした違和感が圧迫感・閉塞感を生み出しやすいため、少しでも周辺の環境にマッチさせる必要があった。

カラーバリエーションは非常に豊富

 これは首都高の路線ごとに、桁が何色に塗られているかを表したもの。「色分けがされていたんだ?初めて知った」という人がいるとすれば、首都高が周辺の環境に溶け込むことができた結果かもしれない。特にコレといった印象が残っていないからこそ、色分けの存在を知らなかったと推論できるからだ。

 逆に言えば、インパクトがあるということは、そのカラーリングが周辺の環境に馴染んでおらず、目立ったり、違和感を覚えたからに他ならない。

 さて、実際どのようにして塗られているか、代表的な例を写真でご覧いただこう。普段走行中は見えない部分なので、こんなにバリエーションがあったのかと驚く人も多いはずだ。

シルキー・ホワイト

ピュア・ホワイト

コロニアル・イエロー

ムーンライト

ジェード・ベージュ

ブルー・グレイ

アイス・グリーン

ピスタチオ

コーラル

 上記のように広域的に色分けをしているところも多いが、もっとピンポイントな場所ごとに色分けしている例もある。

 都心環状線(C1)の日本橋は、もっとも周辺環境と調和させる必要があったポイントの一つ。歴史や伝統、地域の趣を感じさせる色が使用され、暖かみとともに重厚な印象をもたせている。

 大都市部などでは沿道を走るクルマだけではなく、歩行者から見た周辺環境とのマッチングも大切な要素となる。東池袋の出入路では、ビルの壁面と同色系の塗装を施し景観を融和させている。

 6号向島線の桜橋付近では、周辺の植栽に合わせたカラーリングを採用し、見事に調和させている。

 桁ではなく、橋脚に塗装を施すこともある。日本橋付近の橋脚には、写真のように自然石風の吹きつけ塗装を行い、単なるコンクリートではなく、石柱のような和テイストを狙った演出を施している。

 街の特徴や雰囲気に合わせた塗装を行っているのもポイント。3号渋谷線の渋谷付近では、日本橋と同じく自然石風の塗装のほか、目地をつけて石積みのように見せ、モダンな街とのマッチングを図っている。

季節や天候、時間の流れも考慮して色を選ぶ

 さて、首都高はさまざまな色分けがなされていることは分かったが、色はどのような基準で選定されているのだろうか。お気づきの方も多いかもしれないが、カラーバリエーションを見る限り原色系の色は皆無。そのほとんどが淡い色。

 そこには確固たるコンセプトがある。高架橋は都市景観において主張しすぎるものであってはならず、調和を目的とし、明るく軽快で威圧感を和らげる色彩を選定している。だからこそ優しい色あいが多いのだろうが、調和する色を導き出すための調査検討は、意外に大変な手間が掛かっていた。

 調査は現地に赴いて周辺の構造物や風景など、多方面から検分する。歩行者からの視点、そして遠く離れた地点からの見え方なども然りだ。さらに日中から夜間といった"時間"の側面からも調査しているという。その点は下の写真を見比べていただきたい。

(昼)

(夜)

 上の写真は昼と夜に撮影した写真だが、時間が変わっても見事なまでに調和している。しかも驚くのは1日の動きだけでなく、季節や天候なども考慮して検証している点だ。これほどまで微に入り細に入り調査したうえで色を決めているという。目立たず、さりげなく、かつ明るく調和するというのは、こんなにも神経を使うことなのだ。

工事現場の壁にも地域の特性を盛り込む

 最後に、"ここまでやるか"という例をご紹介したい。場所は路線の建設現場。つまりまだ開通していない路線である。その工事現場と一般スペースを仕切る壁にも周辺環境を意識したデザインが施されているのだ。

 ここは浅草、ではなく歌舞伎座にほど近い万年橋。この付近を工事していた時には歌舞伎を連想させる浮世絵などが描かれている。

 心休まる風景が描かれているのは飛鳥山公園の工事現場。まさに周辺環境を考えてそれに沿った内容を描いた好例と言える。

これらには、マッチングだけでなく、見る者を楽しませる意図も多分に入っているだろう。しかし、周辺環境との調和、すなわち周りへの配慮ということに関して、桁の塗装を中心にこれほどまでに徹底していたとは恐れ入る。もしかしたら、現在建設中の路線の工事現場のどこかには、上記のような画が描かれているのかもしれない。

■まとめ

 たかが色、されど色である。普段私たちがまったく意識しないことに、というよりも意識させないために、これほどまで多角的に、かつ徹底的に検証した上で色を選定していることに驚いた。外から首都高を見る機会があったら「ここはマッチしている」「ここはもっと別の色がいいかも」などと、自分なりに評価してみるのもおもしろいかもしれない。

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