特集レポート
管制センターって何をしてるの?
首都高を支える情報網に迫る
首都高の一般利用者にとって、その管制センターは謎だらけ。そもそも道路の交通管制がいったい何をやっているのか、見当もつかない未知の領域だ。今回はその疑問を解くため、一般には立ち入ることが許されない管制センターに取材をお願いした。渋滞情報表示のメカニズムや所要時間の出し方など、その一部始終をリポートする。
道路上に設置されたテレビカメラはなんと1400台!
管制センターとは、首都高速道路を利用するドライバーが安全で快適に、かつ円滑に通行できるようにする役目をもつ。ここでは大きく情報の「収集」「処理」「提供」を行っている。
首都高の管制センターは、東東京(箱崎)、西東京(平河町)、神奈川(東神奈川)の3カ所に分かれている。今回取材に行ったのは、その中でもメーン的役割、管制センターの心臓部とも言える西東京管制センターだ。中に入ってまず目に飛び込んできたのは、横幅が7メートルはあろうかという巨大な「道路交通情報表示板」と、道路状況が映し出された40台ほどのモニター群。そのスケール感に圧倒される。
収集とは、事故や渋滞といった道路上で起こっている情報を集めることだ。その主力となっているのが、路線上に約300メートル~500メートルごとに約4,000カ所に設置されている車両感知器。これは首都高を走っているとよく見かけるお椀のようなもので、2つで1セット。これらは5メートルの間隔をおいて設置され、超音波を出して、その反射する時間差を計測することで通行台数や速度を割り出している。
管制用のテレビカメラも1400台ほど設置されている。たくさんあるように思われるが、これでも路線上のすべてはカバーできないとのこと。ただ、トンネルなど万一のとき危険になる場所では、密度を高めて設置し、死角なく確認することができるようになっている。そのほか、情報収集の手段は、橋上などに設置された風向風速計や、約500メートル間隔に設置された非常電話、料金所、定期的に巡回しているパトロールカーなどがある。
パトロールカーは高速道路で目にすることが多い黄色いクルマ。昼間は29台、夜間は19台の体制で、首都高全域を1日12回巡回している。道路上では、いつ何が起きるか分からないため、多くのパトロールカーが頻繁に巡回していれば、事故などの情報が入った時に、現場に近いクルマがすぐに駆けつけられるというメリットもある。
多くの設備と人手が情報収集に携わっていることについて、管制センターの担当者は「安全、安心、円滑がテーマですから、そのためにも必要なことなんです」と話す。そして、さまざまな手段を通して入ってきた情報は、すべて管制センターに集められる仕組みになっている。
機械と人の連携プレーで情報を処理
首都高から集められた情報は、管制センターで集中的に処理される。この段階では、コンピューターなどによる機械が行うパートと、管制員などの人の手で行われるパートに分けられる。
機械は、計算するものをメーンに行う。例えば、黄色や赤で表示される混雑・渋滞の情報や、霞ヶ関まで70分といった所要時間の情報。これらは基本的に人の手を介さず、機械が計算して出している。具体的にはどんな計算をしているのか?
「車両感知器によって、区間ごとの台数やスピードなどが分かります。スピードが分かれば当然その区間を通過する所要時間も分かる。それらの情報を区間ごとに繋ぎ合わせていけば、道路の状況やある地点までの時間が分かってくるのです」。
ちなみに「どこそこまで何分」という時間情報は、大渋滞などではない限り、得てして表示されている時間より早く着くことが多い。これは算出された時間に余裕をもって表示しているわけではなく、計算方法が、どんなに道路が空いていても制限速度を上限に計算をしているからだ。「制限速度で走った場合、このくらいの時間がかかる」ということなので、実際に車の流れに乗って走行していると、多少早く到着することもある。
一方、人の手は、機械では判断がつかない部分を担当している。例えば渋滞情報。機械はどこからどこまで何キロメートル渋滞しているかは分かる。しかし、なぜ渋滞しているかまでは分からない。機械によって観測された渋滞情報に、電話や無線などで入ってきた事故などの情報を付随させるのが人の役割だ。
取材中、ちょうど事例になる出来事があった。 情報表示版に葛西JCT付近に渋滞の列と、小さな赤いランプが光っている。この赤いランプは何らかの障害が起きていることを表している。
右手の大型モニターを見ると、「9:58 道路障害物 湾岸線(1) 東行 本線」との表示。フレームに収まっていないが、さらに続いて「落下物により、1車線がふさがっている」ことも伝えられている。
そして、渋滞の原因が分かった時点で、道路上の掲示板に「浦安→有明 渋滞12km」と表示されていたものが、「浦安→有明 事故渋滞12km」という具合に、
より詳しい表示に変更される。この判断を行う管制員は、長年首都高でパトロールをしてきた熟練のプロ。「この渋滞はいつもと違う、何かおかしい、見てこい」というパターンで事故が判明することもあるという。
機械と人がそれぞれを補い合って、効率よく情報を処理する。「情報は、収集から提供までのタイムラグが少ないほうがいい。そのためにも最善の方法を用いて情報の処理を行っているというわけです」そして即時性の高い「情報提供」へと結びついていく。
情報はほぼリアルタイムで提供される
情報の提供は、路線上の案内板などはもちろん、インターネットやラジオなどさまざまなメディアを通して行っている。例えばラジオで『交通情報センターの○○さん』と呼びかけて情報を伝える場合は、管制センター内にラジオ各局のブースがあって、道路交通情報表示板やモニターをリアルタイムで見ながら情報を伝えている。
また、路線上の案内板は、情報の新鮮度を保つため、更新も頻繁に行っている。具体的には渋滞情報は1分ごと、どこからどこまで何分といった時間情報は5分ごとの更新だ。その理由は、首都高の状況は刻一刻と変化するので、30分も前の情報を提供してもあまり意味がない。だから、できるだけリアルタイムに近い情報が求められるのだ。
ちなみに、これだけの更新頻度を誇るシステムは、世界にも例がないという。海外からは、この技術を自国のインフラ整備に役立てるために、視察する研究者がよく訪れるという。歴史を紐解くと、首都高の計画が始まった背景には、増え続ける交通量とそれに伴う渋滞をいかに解消するかがあった。道路を無制限に広げることはできないので、これを情報管制というソフトの力で補ってきた。首都高の管制システムは1961年から基礎研究をはじめ、改善を重ねて現在に至っている。
この12月には中央環状新宿線開通が予定されている。インフラのハード面での充実に、管制センターの担当の方へ思うところをうかがった。「我々のテーマは、『安全』『安心』『円滑』。そのためには、ハード面もソフト面も更なる充実が必要と考えている。みなさんには、安全な首都高で、安心して、円滑に走ってもらえるよう今後も努力していきますので、安全運転を心がけてスマートドライブをしていただければありがたいですね」。
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