特集レポート
首都高パトロール隊の仕事とは?
~首都高の安全を守るエキスパート~
首都高の利用者なら、一度は見かけたことがあるであろうパトロールカー。黄色いボディが一際目をひくが、その中に乗っている隊員が、どんな仕事をしているのはあまり知られていない。そこで今回は、実際にパトロールカーに乗車している隊員の方に、任務の内容はもちろん、辛かった出来事や嬉しかったことなども聞いてきたぞ。
現場到着から15分はまるで戦場のよう
首都高を走っている時、パトロールカーに乗った隊員の方たちをよく見かけますが、主にどんな仕事をされているんですか?
「基本的には、定期的なパトロールや落下物の回収、故障や事故といった緊急時の対応などですね。パトロールは原則2時間に1回行っていて、出てから戻るまでおよそ3時間かかます。緊急時の対応というのは、事故や落下物などで無線が入ると現場に駆けつけて、二次事故の防止や関係各所へ状況を連絡するという感じですね。
後方の安全確保は、例えば事故があった場合だと、まず1人が後方の安全確保。もう1人が事故に遭われた方の安否確認や救急隊の要請、レッカーの手配などをしています。こうした役割分担のため、パトロールカーには常に2名体制で乗っています。また、すぐに車線の規制などができるようクルマにはかなりの資材を積んでいます。例えば、発煙筒やコンダクトサイン(矢印版)、カラーコーンなどですね。その他にも牽引ロープやオイル処理剤、消火器などです。
状況連絡では正確さが非常に重要です。ここで誤った情報が伝わってしまうと、後々の処理に多大な影響が出てくるんです。例えば状況説明が不十分で、大型レッカー車が必要なのに小型レッカー車が来てしまったら、もう一度呼ばないといけない。その間に渋滞はどんどん伸びてしまいます。渋滞はさらなる事故を引き起こす元にもなりますから、的確に情報を伝えられるように気をつけています。
現場の安全確保や状況連絡のほかに、事故に遭われた方がケガをしていたら、作業をしつつ励まして勇気づけることもしています。
そうしたことを2人で行うので、現場に到着してから15分はまるで戦場のようになるんです」
パトロールでは対向車線の落下物も発見
普段パトロールしている時は、どんなところに注意して走っているんですか?
「正直に言うと、意識してどこかを見ているなんてことはあまりしていません。普通に走りながら『今日は混んでるなぁ』なんて話してみたり(笑)。ただ誤解してほしくないのは、別にさぼっているわけじゃなくて、視野全体から異変を感じるようにしているんです。
何かヘンだぞ、いつもと違うぞ、と違和感があるときは、前方に故障車が止まっているとか、対向車線に落下物があるなど、なにか問題が起きている。その兆しとなる違和感を見逃さないようにしているんですよ。注意して見るというのは確かに大事だとは思いますが、どこか一カ所を見ていたら他のところは見えませんよね。パトロールに求められているのは首都高速道路の交通全体の安全ですから、どこかにとらわれることなく全体を見渡す必要があるんです。
特に落下物は、木材の破片といった小さい物からドラム缶のような大きい物までいろんな物があります。意外かもしれませんが、実は小さい落下物のほうが危険度は高いんです。大きな物はドライバーからの認識もされやすく、無理して通過しようと思わないので停車するんですね。もちろん先頭の車両は危険なんですが、大事故には繋がりにくい。ところが小さい物というのは、認識されにくいうえに、『大丈夫だろ?』と通過しようとしてしまう。するとタイヤで落下物を跳ね上げたりハンドルを取られたりして、重大事故に繋がるケースもあるんです。こうした小さい落下物を見逃さないためにも首都高速の全体に目を配ることが大切なんですよ。
だから、しっかり見てはいるけれど、どこかに注意して見るということはあまりしていないですね」。
サイレンを鳴らして気持ちいいのは最初だけ
お話を聞いていると、かなり専門的な知識や経験が必要な仕事だと思うんですが、なぜパトロール隊員になりたいと思ったんですか?
「そうですね、やっぱり人の役に立ちたい、困った人を助けたいと思ったからですね。なんかカッコ良く聞こえちゃうかもしれませんが、本当にそうなんですよ。あとは憧れもありましたね。ビシっと制服着てカラーコーンを並べたり、サイレン鳴らしながら颯爽と走ってる姿に。
ただサイレンを鳴らして走ることに喜びを感じたのは、入りたての頃だけ。その後は鳴らして走る時は緊張しっぱなしですよ(笑)。というのも、そういった緊急時は、通行しているクルマに避けていただいて走るわけで、いわばクルマとクルマの間をジグザグ走行しているようなものなんです。誰だって狭い道を走る時は緊張すると思うんですが、ボクらは自分たちが事故を起こすのは絶対にあってはならない事だと教えられています。安全を守るものが事故を起こしてしまったら、元も子もありませんからね。だからこそいつも以上に神経を使います。
今にしてみると、ボクが憧れた時にサイレンを鳴らして走っていた人も、実は緊張していたんだろうなぁなんて思いますよ」。
夏の路上は50度以上。10分もすれば汗でビショビショに
今は逆に憧れの的になる立場だと思うんですが、これまでにはいろんな苦労や辛い経験がたくさんあったのではないでしょうか。この仕事をやっていて辛いと感じるのはどんなことですか?
「一番は気候ですかね。夏場の道路上は50度以上にもなるんです。その中でテキパキ動かなければいけない。今の時期は、10分も経たないうちに制服はビショビショになっちゃいますね。冬もやっぱり辛いもので、ブーツの中にカイロを入れていても、体の芯から冷えてきます。路面凍結を警戒しているときなどは、その寒さの中で凍えながら7時間立ちっぱなしなこともあります。
あとは、事故を起こしたドライバーさんに急に怒られたり罵声を浴びせられたりした時は辛いですね。パニック状態なのは分かるんですが……。タバコを投げられたりしたこともありましたからね。そんな時は、正直この仕事を辞めたくなることもあるんです。
でも『ありがとう』とお礼を言われたりしたら、本当に嬉しいんですよ。『あぁやってて良かった』って心底思います。小さなコミュニケーションなんですが、とても効果は大きいんですよね。事故なども『お先にどうぞ』といった心持ち、無言のコミュニケーションを取るだけで大幅に減ると思っています。
今後みなさんが今以上に譲り合いの心を持って運転していただけたらありがたいですね。そうすればボクらはヒマになれますから(笑)。ってもちろんサボりたいわけじゃありませんよ。ボクらがヒマな状況というのは、みなさんに安全な道路状況を提供できているという証ですから」。
普段、何の気なしに見かける事故処理の光景。今回はその中で働く人に話を聞いた訳だが、パトロール隊員は自分の身を危険にさらしつつも、素早い状況判断やそれに伴う行動、そして専門的な知識や経験も求められる。限られた時間の中で的確に仕事こなす様や安全に対する考え方は、話を聞けば分かるとおり、首都高の安全を守るエキスパートそのものだった。
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