特集レポート
事故処理の平均時間は約55分
~現職パトロール隊員に聞く事故復旧ドキュメント~
前回の特集/コラムで首都高パトロール隊の仕事について話を伺ったが、今回はその中でも最も重要な任務の一つ、事故処理に注目。1日平均32.7件(平成18年度)の事故をどのように処理しているのかを中心に、現職のパトロール隊員の方に事故多発地帯や事故防止のポイントなどを聞いた。
事故処理は2手に分かれて役割分担
首都高では確率的に1時間に1件以上事故が起きている訳ですよね。そう考えると事故率は結構高いような気がするんですが、事故処理はどのような流れで行っているのですか?
「まず事故率に関しては、一概に高いとは言えないのです。東京都の一般道で起こる事故と比べれば、1/6以下なんですよ。ただ他の都市間高速道路に比べると、分合流やカーブが多い上に、形状が複雑なので事故が多いのは確かです。
首都高の場合は、1つの事故が渋滞を引き起こし、それが新たな事故を生むというケースもあるので、事故処理は迅速に行うように心がけています。そのためには、まずいち早く現場に到着することが大切です。
私たちは事故の一報が入った時は、分駐所からではなく、現場に最も近い場所をパトロールしているクルマが駆けつけるようにしています。基本は1台に搭乗した2人で対処しますが、現場によって、交通量が多いところや現場からずっと手前での誘導が必要なところ、複数の合流点があるJCTなどで対応しなくてはいけないことなど、2人だけでは到底対応できないケースもあります。
そういう時には、他の場所をパトロールしている仲間たちが緊急無線を聞き、1台で対応できる規模かどうかを判断し、『あの現場なら、あそことあそこのJCTを止める必要があるな。そこは引き受けた』『カラーコーンが足りないだろうから届けてやる』という具合に機動的にサポートして事故処理にあたっています」。
安全が確保できれば車線規制はしない
事故処理においては、どんな点に注意して作業をしているんですか?
「やはり『安全』と『スピード』ですね。安全は事故に遭われた方はもちろん、自分たちの安全も確保しなければなりません。なので車線規制をする時などは、必ずドライバーの目を見て止まってもらうための誘導サインを出すようにしています。
これはクルマを停めるのが目的ですが、運転しているのは人間。しっかりと運転している人の目を捉えて、サインを出すようにしています。アイコンタクトをすることで、私とドライバーのコミュニケーションができ、しっかり停まってもらえるという訳です。
もう一つのスピードですが、これは出来る限り交通を妨げないという意図があります。私たちは安全が確保できるなら、なるべく車線規制はしない方向で考えています。というのも、首都高は利用者が非常に多いので、車線規制をすると当然のように渋滞が起こります。
渋滞になれば追突などの危険性が高まります。追突事故は首都高の事故の約半数を占めるくらい起きやすいんです。事故が事故を呼ぶ状況は絶対に避けたいので、できる限り早く事故処理を終え、渋滞を作らないように心がけています。そうすることが、ひいては二次事故の防止につながっていると考えています」。
事故処理の平均時間は約55分
迅速な事故処理を心がけているということですが、事故処理には大体どれくらいの時間がかかるのですか?
「事故の状況や大きさによって変わるので一概には言えませんが、重大事故なども含めた事故の平均処理時間は約55分ですね。
軽微な事故でしたらもっと早く終わりますが、施設損傷があった場合などは点検もしますし、警察が検証することもありますので、なかなか何分とは言いにくいところもあります。
ただ、昔に比べたら、先ほどお話ししたとおり、より効率的に作業を進めることで事故処理にかかる時間は短縮されてきています」。
雨は降り始めと上がった直後が危険
長年パトロールカーに乗られてきて、様々な事故現場に遭遇されたと思うのですが、こんな所が危ないといったポイントはありますか?
「そうですね、やはりカーブや分合流の多いジャンクション(JCT)まわりですかね。箱崎、江戸橋、汐留、竹橋あたりは特に多いです。
意外なところでは、3号線上りの谷町JCTの手前も多いんです。ここは直線なのですが、なぜか事故が多い。どうしてだろうとよくよく話を聞いてみると、『六本木ヒルズを見ていた』と言うケースが少なくありませんね。よそ見をしていて追突しちゃったと。
「よそ見」といえば、渋滞時の追突事故の原因も、居眠りと並んでよそ見が多いです。少し進んではまた停まるという繰り返しで緊張感が緩んでしまうんでしょうね。パトロールをしていると、渋滞で退屈なのか、ハンドルを握りながらマンガ本を開いていたり、中には小説を読んでいる人を見かけて、驚くことがあります。危険なのでやめてほしいですね。
危ないポイントとはちょっと違うのですが、雨の日も危険ですね。雨が降っている最中ももちろん注意が必要ですが、事故発生が多いのは、実は降り始めと雨が上がってすぐの時なのです。
降っている最中というのは、みなさん注意して運転しているので、それほど多くはない。ただ降り始めは、晴れている時と同じ感覚で運転してしまう人がいて事故になることがあるんです。同様に、雨が上がってすぐの時は、『よし、雨は上がった』と晴れている時と同じ感覚で運転してしまう。ところが路面はまだ濡れているので、スリップしてしまうことが多々あります。
雨の時は、上がった後もしばらく降っている時と同じように注意して運転してほしいですね」。
急いでもそれほど時間は変わらない
最後になりますが、誰しも事故の当事者にはなりたくないはずです。我々利用者が事故を起こさないためには、どんな点に注意して運転すればいいでしょうか?
「具体的に言えば、しっかり車間距離をとることや、脇見運転をしないこと、ウィンカーなどは早めに出すこと、過剰にスピードを出さないことなどですね。言ってみれば、教習所で習ったことをしっかりやることだと思います。心構えとしては、『心にゆとりを持つこと』に尽きます。
急いでいるからなどとゆとりがない状態で走ると、車間距離を狭めたり、猛スピードを出したり、合流時に割り込んだり、逆に入れなかったりすることが多々あります。渋滞時には少しでも空いた車線に入り、やたらと車線変更を繰り返す人もいますね。急いでいるのはよく分かるのですが、これらは事故のリスクを増やすばかりで何の得にもなりません。
意外に思うかもしれませんが、そんな行動をしても、たいして時間は変わらないんです。渋滞時などにぜひ試してみてほしいのですが、隣の車線を走っている目立つクルマなどを目印に、しばらく走ってみてください。多少の抜きつ抜かれつはありますが、最終的には前後を見渡せばほとんど見える範囲にいるはずです。すると、先ほどのような行動がどんなに馬鹿げているかお分かりでしょう。事故のリスクは高くなっているのに、時間はほとんど変わらないんですからね。そのうえ事故を起こしたら急いでいたのにもっと遅くなる。これでは本末転倒です。
心にゆとりをもって運転すれば、必ず事故は減ります。事故が減れば無駄な渋滞もなくなります。そうすれば結果的に早く着くことにつながってくる訳です。そんなことを頭の片隅に入れつつ、ゆとりを持って日々の運転をしていただければありがたいですね」。
まとめ
急いでいる時、本文中に出てきた行動を取ってしまう人も多いのではないだろうか。しかしパトロール隊員の方は一刀両断する。「時間が変わらないばかりか、事故のリスクだけが増える」と。「心にゆとりを持つだけで事故が減る」という言葉も含めて、長年首都高をパトロールしている人が語る言葉は、真実味を帯び、そして重いものだった。
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