連載
【石黒謙吾の「本当に首都高であったオモロイハナシ」】2008-07-18
Vol.6(最終回)「首都高が映画『惑星ソラリス』で未来都市に」
Vol.6(最終回)「首都高が映画『惑星ソラリス』で未来都市に」
~1972年公開、タルコフスキーの映画~
いつも、じっと車の重みに耐えている寡黙な首都高さんですが、実はとても人間のことをよく知っています。なにしろ、45年24時間片時も休まず、道の上で起こったいろいろな“事件”を見上げてきたのですから。このコラムは、その中でオモシロイできごとや興味深いできごとを拾います。そして、首都高さんの1学年先輩!?である石黒謙吾が、現場レポートよろしく事件を検証!ただし、カジュアルかつ無責任かつゆるーくですけど。
読売新聞 2007年12月3日朝刊 付 この記事・写真等は、読売新聞社の承諾を得て転載しています。無断で複製、送信、出版、頒布、翻訳、翻案等著作権を侵害する一切の行為を禁止いたします。 「著作物の説明」
首都高さんは、さりげなく、もんんんのすごい数の映画に出演しているはず です。よっ! 名脇役! 助演男優賞獲っちゃうよもう、ニクイねこの~。ひゅーひゅー! と持ちあげてみたところで、でもほとんどはちょい役だよね ~、と落としてトホホ。そうです。たいがいはまさに縁の下の力持ちと、主役などが車で走るシーンでちらちらと映り込むに過ぎません。エキストラに毛が生えた程度ね。しかーし、重要なキャストとして5分近くメインで出ずっぱりというオイシイのがあるんです! それも海外の名作。カンヌ映画祭で審査員 特別グランプリを獲ったという哲学的SF映画です。
その名は『惑星ソラリス』(※1)。1972年公開ですから、36年前。旧ソ連の映画監督、アンドレイ・タルコフスキーを世界に知らしめた記念碑的作品なんです。タルコフスキーは、叙情的な自然描写や映像美、さらに精神世界を追求し、アーティスティックな映画を残しています。また、日本の俳句や映画が好きで、黒澤明に傾倒していたそう。
内容をざざっと言いましょう。「海と雲に覆われた惑星ソラリスを探索に行った宇宙飛行士が、死んだ妻が現れるなど、不可解な現象に惑わされる。それは、人間の潜在意識が実体化したもので、惑星の神秘的パワーによるものだった」ってとこ。2時間40分にわたる長編を僕も今回初めて見たんだけど、たんたんと進む静かな映像から、人間の心理とか本質をじわっじわっと考えさせられる手法が見事。
『惑星ソラリス』鑑賞中!
72年当時のロシア人から見た未来都市のイメージでは、首都高の風景がはまると、タルコフスキー的には感じたのでしょう。特に、登場シーンのラストに、赤坂見附付近の夜景で、首都高が交差しているところを上空から撮ったところが出てきますが、ヘッドライトが交錯して流れるあたりは、かなりそれらしい雰囲気。考えてみたら、高速道路は世界にたくさんあるわけだけど、どこも広々とした土地にダイナミックに走っている感じで、東京みたいに限られたスペースに道路が折り重なっている所はないのかもね。と思って、原稿書くため調べていたら、実は、というネタが……。
タルコフスキーは、最初、未来都市の場面を大阪万博会場にしようと思っていたみたい。ところが撮影許可がなかなか下りず、万博は閉会。跡地を訪ねたけど、イメージが違っていて、仕方なく、東京の首都高速道路に白羽の矢を立ててようだ。しかも、その時に会った黒澤明監督によると、映画に出てくる道筋は、タルコフスキーの泊まったホテルから、当時の黒澤明の事務所までの道そのままだったんだとか。ってことは、華々しくキャスティングされたと思っていた首都高さん……。いわゆるひとつの、代役、ってか?
※1…『惑星ソラリス』/DVD発売元(株)アイ・ヴィー・シー。税込価格6,090円
石黒謙吾 (著述家/編集者)
http://www.blueorange.co.jp
映画化もされた『盲導犬クイールの一生』から、『ダジャレ ヌーヴォー』『図解でユカイ』『CQ判定 常識力テスト』『ベルギービール大全』などカルチャー路線まで著書多数。最新刊で初の短編小説集『犬がいたから』(集英社)が好評。
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映画化もされた『盲導犬クイールの一生』から、『ダジャレ ヌーヴォー』『図解でユカイ』『CQ判定 常識力テスト』『ベルギービール大全』などカルチャー路線まで著書多数。最新刊で初の短編小説集『犬がいたから』(集英社)が好評。
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