連載

【石黒謙吾の「本当に首都高であったオモロイハナシ」】2007-12-10

Vol.1「首都高さんのバースデー」
~1962年12月20日~

いつも、じっと車の重みに耐えている寡黙な首都高さんですが、実はとても人間のことをよく知っています。なにしろ、45年24時間片時も休まず、道の上で起こったいろいろな“事件”を見上げてきたのですから。このコラムは、その中でオモシロイできごとや興味深いできごとを拾います。そして、首都高さんの1学年先輩!?である石黒謙吾が、現場レポートよろしく事件を検証! ただし、カジュアルかつ無責任かつゆるーくですけど。

読売新聞 昭和37年12月19日夕刊 付
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石塚英彦、木梨憲武、松田聖子、布袋寅泰、藤井フミヤ、高田延彦、水道橋博士、パンツェッタ・ジローラモ、軽部真一、畑恵、ロジャー・クレメンス……。さて問題です、この人たちの共通項は? <ポ~ン>ハイ、青の石黒さん早かったどうぞ!

「首都高と同じ年!」ー生れてこのかた、謹厳実直あるのみと力仕事で生きてきた首都高(しゅと・こう)さん45歳。ここに挙げた著名人のみなさんと同じく激動の日本を(クレメンスはアメリカだけど)生きてきて、今もがんばってまさに働き盛りです。

1962年12月20日。首都高さんが産声をあげた産婦人科(道路ね)は、港区の芝浦口。スモッグが立ち込める中(昔は車の排気ガスで街中が焼き鳥屋のようになったのよ)、誕生が祝われました。当時の河野一郎建設大臣が乗るオープンカーを先頭に車数百台で京橋まで祝賀パレードが行われたというから、ずいぶん騒がれたガキ……いや子供だったわけですね。

それもそのはず、高少年は、その2年後(1964年)に開かれる東京オリンピックには誕生させていたいという国の大きな期待から、大急ぎで“仕込まれ”たのでした。

国立オリンピック記念青少年総合センターにて

でもって期待が大きかったぶん養育費(通行料金ね)も高かった。最初は50円、翌年に100円、その翌年に150円と上がっていったんだって。ソバ1杯が50円だったというから結構いいお値段。精をつけようと親が食べまくって(建設費ね)みたいな、まあ建設費がかかったということなんでしょう。セレブな子供でした。

ソバ50円の時代というととてもいにしえな感じがしたんだけど、自分がその前年に産まれてたことを思い、愕然……。テレビの普及率がまだ48・5%だったんだってよ! オレ、そんなに昔の人だったのね。でもたしかに、白黒テレビを知ってるし。

ちなみに誕生当日の新聞各紙にあるデカめの広告を見ると。<「成長産業のエネルギー」三菱ふそう トラック/バス/ブルドーザ>自家用車じゃなく運輸用を新聞広告に…。<『週刊明星』三波春夫と村田英雄の大ゲンカ!>組み合わせ、濃すぎるし…。<三菱鉛筆UNI>えんぴつ、かあ…。<柳屋へヤートニック>化粧品ブランドが、屋、て…。<「デラックスなクリスマスのための デラックスなバーゲン」しぶや東横>ちなみに写真はデラックスな指輪をいくつもはめているデラックスな手。うーむ。今見るともろもろびっくりだけど、今の広告を45年後に見てもやっぱり同じように思えるでしょうね。

当時は電化製品やら建造物やらメディアやらで革命的なことが次々に現れ、日本じゅうが浮かれまくってイケイケだったんですね。敗戦から完全に立ち直り、高度経済成長期として欧米の先進国に追いつけと。そして高少年も、オリンピックを見に来る外国人の前に出せる精鋭として注目を浴びました。彼は未熟ながらもホストとしての役目を果たして期待は事実となり、少年を生み出そうとした国のエライ人たちも胸をなでおろしたことでしょう。

さあそして、誕生にまつわるストーリーは、彼が生れた1962年に流行った曲の中で、盛り込まれているということをを僕は見つけてしまいましたよ、ふっふっふ。

国民に「いつでも夢を」(橋幸夫&吉永小百合)与えるにはじゅうぶんな存在としての「可愛いベイビー」(中尾ミエ)だった首都高少年。そして誕生した日、できたてのハイウェイを走る人々はとても快適に車を走らせます。しかし、カーラジオから流れていたのは、今も首都高さんが座右の銘とするメッセージでした。

走行中は決して後ろを「ふりむかないで」(ザ・ピーナッツ)……。

石黒謙吾 (著述家/編集者)
http://www.blueorange.co.jp
映画化もされた『盲導犬クイールの一生』から、『ダジャレ ヌーヴォー』『図解でユカイ』『CQ判定 常識力テスト』『ベルギービール大全』などカルチャー路線まで著書多数。最新刊で初の短編小説集『犬がいたから』(集英社)が好評。

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